その5 「無人化」の光と陰



大阪万博では、パビリオンに展示されたモノ以外に、
その会場の施設にも、未来的なモノがありました。

その一つが、「モノレール」。

モノレールには、レールを跨ぐ跨座式と、レールにぶら下がる懸垂式の
2方式があり、大阪万博のモノレールはレールを跨ぐ跨座式。

白いボディにブルーのラインのモノレールは、
万博会場の周囲に、4.3kmの線路が設置され、
逆時計回りに15分で一周します。
駅数は7駅、4両編成の車両が2分30秒間隔で運行。
料金は無料で、全自動運行されていました。
(但し、車両は無人ではなく、乗務員同乗でした。)

営業路線としてのモノレールは、既に1964年9月に、
東京オリンピック開催に合わせて「東京モノレール」が、
浜松町、羽田空港間に開業されていました。

とはいえ、本格的なモノレールはまだまだ珍しく、
広い会場内を、人気パビリオンを求めて移動する人達で、
モノレールは大変な人気でした。

その人気ぶりと、先進技術である自動運行が災いしたのか、
開幕早々、ドアに何かがはさまり、ドアが閉まらなくなって、
自動的に運行が停止。後続の列車が全て停止してしまったり、
定員70%オーバーで運行し、スピードが出過ぎて、
乗務員が非常ブレーキをかけ、6mオーバーランして急停車。
乗客が将棋倒しになり、負傷者も出ました。

しかし、モノレールは万博会期中、多くの入場者の足として、大活躍。
思い出に残っている方も、多いのではないでしょうか。


ここで、注目したい技術は「自動運行」です。

1970年頃の少年向けマンガ雑誌では、未来の交通として、
自動車の自動運転が紹介されていました。
(あくまでも、想像の世界ではありましたが。)

ハンドルに内蔵されたマイクに向かって、行き先を告げるだけで、
自動車が、その名の通り「自動的」に目的地まで乗せて行ってくれると
いうものでした。

事故もなく、渋滞も避けるとのことだったのですが・・・。

30年後の今日、自動車の性能は向上したものの、
現実は、「自分の居場所がわかる」という所まで技術は進歩しましたが
人間が運転しなければならない事には変わりはなく、
交通事故も、相変わらず大きな社会問題になっています。

さて、鉄道の方は、線路上を走行する、
自動車とは全く違う特性を活かし、事故防止技術が進みました。

ATC(列車自動制御装置)やATS(列車自動停止装置)は、
現代の日本の鉄道では、当然の如く、多くの路線で採用されています。

その、究極の形と言うべき「自動運行」システム。

大阪万博「モノレール」の子供達は、万博から11年後、
1981年2月に、神戸新交通の「ポートライナー」が、
3月には、大阪市交通局の「ニュートラム」が、
相次いで開業し、実用化されました。

現在では、東京臨海新交通の「ゆりかもめ」をはじめ、
以下の新交通システムが運行中です。

・広島高速交通「アストラムライン」
・神戸新交通「六甲ライナー」
・横浜新都市交通「金沢シーサイドライン」
・西武鉄道山口線「レオライナー」
・埼玉新都市交通「ニューシャトル」
・山万ユーカリが丘線「こあら」号

しかしながら、「安全」なはずの自動運行システムでも、
1993年10月5日には、大阪市交通局の「ニュートラム」が、
終点の住之江公園駅で自動停止せず、車止めに激突。
215人の負傷者を出す、大きな事故となりました。

1970年の最新技術は、11年後に、
華々しく我々の生活の場に登場したものの、
23年後には悲しい出来事を起こしてしまう。

今後21世紀には、あらゆるシーンで「無人化」が進行することでしょう。

その「安全」な「無人化」を造り出すためには、
「無人化」の向こうに見える、果てしないテクノロジーとの戦いを、
しっかりと見極める、さらなる「人間」自身の研ぎ澄まされた感性が、
必要なのではないでしょうか。


さて、ここからは「モノレール」のお話の余談です。 大阪万博の跡地である、万博記念公園に遊びに行く場合、 現在、一番近い公共交通機関の最寄り駅は「大阪モノレール」の、 「万博記念公園駅」です。 万博公園とエキスポランドの中央を貫く道路、中央環状線に、 モノレールが建設され、万博開催時にのみ存在した、 北大阪急行「万博中央口駅」の位置に、高架駅が完成、開業したのが、 万博からちょうど20年後の1990年6月1日。 現在では、門真市駅から大阪空港までの21.2kmが運行され、 その長さは、東京モノレールの16.9kmを抜き世界一。 ギネスブックにも認定されています。 車内は、床面が平らで、ちょっと小型の電車のイメージ。 東京モノレールのように、無粋なモーターの出っ張りはありません。 (新しいので、当然ですが・・・(^_^;)) また、万博記念公園がスポンサーになったペイント車両も運行中。 やはり、車体の横には太陽の塔のペイントが!。 門真市駅から万博記念公園に向かって乗車すると、 途中、南摂津駅と摂津駅の間で、東海道新幹線の上を通過します。 この時、眼下には東海道新幹線の鳥飼基地を見ることができ、 白い新幹線車両の隊列が、往年の万博少年の心をくすぐります。 そうこうしている間に、左前方に、エキスポタワーと観覧車が、 そして、太陽の塔が見えてきます。 大阪万博に行ったことのある方も、大阪万博に行くことが出来なかった方も、 すこーしだけ、30年前にタイムスリップできる「大阪モノレール」。 あの「どでかい」太陽の塔に会いたくなったら、 是非とも、モノレールで行かれることを、お勧めします。 「自動運行システム」 実現度・・・・・・・・・★★★★★ 快適度・・・・・・・・・★★★★★ でも、ちょっと怖い度・・★★☆☆☆ 『関連サイト』 大阪モノレール http://www.osaka-monorail.co.jp/